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2019/11/19
  • 校長の声

No.36 谷川俊太郎さんの近作「私語」

「中央公論」12月号が「国語の大論争」を特集しています。そのトップに谷川俊太郎さんの詩「私語」が載っています。

   国語を喋るの誰ですか

   当方と国が言いました

   法の言葉で国は喋る

   民の言葉は当てにならない

 

   日本語を喋るの誰ですか

   ワタシとルーシーが言いました

   国を出てから七十余年

   今では日本語が母語のよう

 

   喃語を喋るの誰ですか

   ングングと赤ん坊が言いました

   意味も無意味もごたまぜで

   言葉が生まれかけている

 

   Iがでかい顔するのはYOUに失礼

   エゴが薄い日本語は忖度し過ぎて

   論理も倫理も無理へと溶ける

   国語が国の言葉なら…

 

   にほんごはわたしのことばです

   わたしはひとりこっそり

   私語してる

 

 「論理も倫理も無理へと溶け」やすい時、私たちはどんな言葉に耳を傾けたらいいのでしょう。私たちの心に届くのはどんな言葉なのでしょう。

 夏目漱石「坊っちゃん」の最終章で、坊っちゃんは、二つの学校の喧嘩の群れの中に割って入った自分(と山嵐)を「無頼漢」と指弾した新聞に腹を立てて「新聞を丸めて庭へ抛(な)げつけたが、それでもまだ気に入らなかったから、わざわざ後架(こうか)へ持って行って棄てて来た」と言います。坊っちゃんは、実は、第1章で(少年時代に)別の物を後架に落としていました。下女の清が渡してくれた3枚の一円札です。坊っちゃんが後架に落とした二つの物(「貨幣」と「国語」)は漱石が生涯を通して向き合った対象そのものなのでした。

 写真はこの秋の華道部員(作品3点)と調理実習生からの校長室へのプレゼントです。これらの写真は決して抛(な)げ棄てることなく、大事にしていきます。

 

 

  

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