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2018/09/28
  • 校長の声

No.15 秋の使者 ―― 間奏曲風に

秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる(藤原敏行『古今和歌集』)

今年は夏と秋のせめぎ合いの前線が長々と居座っていて、「風」(大気)より先に「目」が秋を感じ取っています。彼岸花(曼珠沙華)も盛りを過ぎました。校長室にも秋の使者が訪れました。華道部の2年生・門田愛理さんと1年生・大江菜羽さんが、すすき・鶏頭・おみなえし・菊による作品「小さな秋の発見」を運んで来てくれました。すすきの原に咲く花々の色彩のバランスがポイントのようです。菊からは芭蕉の「菊の香や奈良には古き仏たち」などいくつか、鶏頭と言えば真っ先に子規の「鶏頭の十四五本もありぬべし」が思い出されます。すすきの句で私が好きなのは飯田蛇笏の「折りとりてはらりとおもき芒かな」なのですが、高村光太郎の詩集『智恵子抄』からも「山麓の二人」の冒頭と末尾の数行ずつを引いておきます。

「二つに裂けて傾く磐梯山の裏山は/険しく八月の頭上の空に目をみはり/裾野とほく靡いて波うち/芒ぼうぼうと人をうづめる」「この妻をとりもどすすべが今は世に無い/わたくしの心はこの時二つに裂けて脱落し/閴(げき)として二人をつつむ此の天地と一つになつた。」 磐梯山は、『智恵子抄』の「樹下の二人」のリフレイン「あれが阿多多羅山/あの光るのが阿武隈川」で知られる安達太良(あだたら)山とともに私の故郷・福島県を代表する山です。

季節の間奏曲の最後に、おみなえしの代わりの秋草として、今拙宅の小庭の片隅に顔を見せる露草の写真と三好達治の詩「かへる日もなき」を載せておきます。「かへる日もなきいにしへを/こはつゆ艸(くさ)の花のいろ/はるかなるものみな青し/海の青はた空の青」

 

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