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2018/09/08
  • 校長の声

No.13 「小さな目標」に「細かく割って」

8月29日の午前の2時間、看護科専攻科の第41回症例研究発表会に出席しました。11のテーマ別に「症例の説明」「発症してから受け持ち期間中の経過」「看護の実際」「考察」「結論」などにまとめた発表と質疑応答がありました。

専門的な説明もありましたが、素人の私は口頭で触れられた患者さんの「家族構成」や「生活習慣」の報告が印象的で、思わず我が身を振りかえさせられました。学生にとっても、看護実践の意味合いのみならず、一人一人の患者さん(今回はほとんどが高齢者)を尊重することで自身の生き方を考える学びの機会にもなったはずです。全校の生徒に聴かせたいなと思ったこともたくさんありました。ある「考察」中の引用には「自己効力を高めるアプローチは、患者さんの行動変容に有効です。目標を設定するときは過大な目標ではなく、小さな目標を段階的に設定することで、患者さんは『できた』という成功体験を積み重ねることができ、積極的な行動をとれるようになる」とありました。

前に紹介した井上ひさし『ナイン』の最後に「握手」という短編が収められています。井上さんと思しき「わたし」が世話になったカトリック児童養護施設園長の修道士を、その握手ぶりとともに思い出す話です。カナダ生まれのルロイ修道士は言います。「仕事がうまく行かないときは、このことばを思い出してください。『困難は分割せよ』。焦ってはなりません。問題を細かく割って一つ一つ地道に片付けて行くのです」と。

私たちは、目の前のことにとらわれて、それだけを大きく見過ぎて、どうせダメなのだから、どうせ変わらないのだから、と手を拱きがちになります。目は遠くを、手は近くを、です。今の不安・弊害がなくなった先の理想状態を遠くに望み見ながら、そこまでの長い道のりを「小さな目標」に「細かく割って」、目の前の課題の一つ一つに、直に手をつけて行かなければならないのでしょう。

(写真は、発表会光景と二つの発表画面です。)

 

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