- 校長の声
Go To Read
■□■ No.57 Go To Read ■□■
11月13日の「学校入試説明会」冒頭の挨拶で、中学生の皆さんに「コロナから学んだこと」を2点に絞って短く話しました。その一つは、「様々な情報から大事なことを聞き分けて、守るべきことはきちんと守る」生活態度が、この国の学校教育の成果として、多くの人々に受け入れられてきたのではないか、ということでした。
13日を挟んで、ヤマザキマリさんの『ムスコ物語』を読みました。
漫画家のヤマザキさん(母方は代々カトリック信者)が息子のデルス君の成長を軸にして、個性的な音楽家である母の娘でもあり、イタリア人(デルス君の父も、再婚した夫もイタリア人)の妻でもあり、デルス君の母でもある自分の生き方(成長の歴史)を振り返った「物語」です。次のような文章があります。
「私は自分が子供の頃、(母が仕事で長期留守中に)家で妹に頼られながら自分の抱える心細さを昆虫採集や読書や絵を描いて紛らわしていたことを思い出した。それを気の毒なことと捉える大人もいたかもしれないが、最終的に自分の生き方は自分ひとりでプロデュースするしかないと気がつけたのは、私にとって大切な成長の一節でもあった。」
「子離れの早い遅いが良い悪いという問題ではない。人によって家族や生活環境、そしてメンタルにも個人差があるから、親子の距離感にスタンダードはない。」
デルス君は親の都合でイタリア→シリア→ポルトガル(中学)→アメリカ・シカゴ(高校)と転々した後、「やっと親元を離れ」(デルス君の言葉)ハワイの大学を卒業し、その後、東南アジアの旅に出ます。『ムスコ物語』の「あとがきにかえて」は彼が書いた「ハハ物語」という文章です。その結びの一段落はこうです。
「息子にとってこの世で誰よりも理不尽でありながらも、お人好しなほど優しい人間である母ヤマザキマリ。そんな母のおかげで国境のない生き方を身につけられた私は、おかげさまでこれから先も、たったひとりきりになったとしても、世界の何処であろうと生きていけるだろう。」
世界で学んだ(世界を学校にした)親子の物語と言っていいでしょう。狭い世界で頭を硬くしがちな私たちも、この本の世界で心を広げて、親についても子についても新しい学びを楽しむことができそうです。
学校の図書館には、他にもヤマザキさんの本があります。
親子の学校物語というなら、ヤマザキさんと並んで人気のブレイディみかこさんの本も図書館にあります。
「読書の秋」の季節はもう終わったのでしょうか。「読書の秋」という言葉自体が死語になってしまったのでしょうか。
それなら、「Go To Read」でいきましょう。
「Go To トラベル」「Go To Eat」の前に、お金をかけずに、「Go To Library!」「Go To Read!」
写真は、図書館の一隅。それに、例によって新校舎建築の現況と華道部員の手になる校長室向け生け花です。
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