- 校長の声
No.56 小さいエピソード ―― 宣誓式式辞から
■□■ No.56 小さいエピソード ―― 宣誓式式辞から ■□■
式 辞
(略)
今日、校長は小さいエピソードを二つ話します。
一つ目は全くの私事で恐縮なのですが、校長は、夏の間に休みをもらって、手術を受けました。その入院中のことです。
手術の翌日、初めて飲水が取れる予定だったので、いつ飲めるのだろうとドクターの回診を待つ気持ちでいたのですが、前夜から担当の看護師さんが早朝の検温時に「喉が渇いていませんか。今日はもう飲んでもいいのですよ。」と言って、吸い飲みに手を添えて飲ませてくれました。ドクターの回診後、日中担当の看護師さんに「一口飲みたいのですが」とお願いすると、すぐに用意してくれて「どうぞ」と吸い飲みを手渡してくれました。「あ、自分で飲めというのだな」と分かって飲もうとしたのですが、手元不如意で口元にこぼしてしまいました。自分が失敗してみて、手を添えてくれた初めの看護師さんのさりげない心遣いに気づくことができました。
二つ目のエピソードは、この夏に行われたパラリンピックの視覚障碍者女子マラソンで優勝した選手の介添え役、選手の左手と自分の右手を結んで伴走した男子ガイドランナーについてです。
ガイドランナーは絶対に選手の前を走って選手をリードしてはいけない。常に選手の横にいて、選手の腕振りに合わせて自分の腕を振り、選手の歩幅に合わせて自分の歩幅を加減し、選手の息遣いをはかりながら走る、というのです。
この話を聞いて、私は、私のために吸い飲みに手を添えてくれた看護師さんを思いました。前に立って自分の思う方に引っ張るのでもなく、本人の気持ちを考えずに後ろから無理やり押してやるのでもなく、自分の横にいる人のために自分はどうしたらよいか、常に心を砕いて、さりげなく手を添えてやる。
看護師の仕事だからというよりも、看護師としての仕事の中に、人間としての常日頃の心がけがさりげなく現れ出たのではないかと私は思いました。
これからの病院での実習では、看護師の動きの基本をしっかり学んでください。そして、学校に帰ってきたら、看護師として病院で学んだことを、人間として、カタリナの生徒として、日常生活にも活かしてください。
自分の横にいる人、家族であれクラスメイトであれ誰であれ、その人のために細かく気を配って、さりげなく手を差し伸べられるようになりましょう。
病院での実習を終えた皆さんが、人間としても成長して学校に戻ってくることを、楽しみにしています。
(略)
写真は、前回同様、新本館建設の現況と校長室内のお花(華道部員+シスターの作)です。
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